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蛇がくる夜

思ったこと

初めて口笛が吹けた頃、何度も口笛を吹いた。嬉しさと、また吹けなくなる不安があったから。

 

夜に口笛を吹くと、母は僕にウルサイと叱った。そして「夜に口笛を吹くと蛇がやってくる」と言った。僕は怖くなって、夜の口笛を控えるようになった。

 

それでも時々、つい口笛を吹いてしまった。その度に「蛇って、今どこまで近づいてるんやろう?」と思っていた。

 

やがて口笛を吹くことは無くなった。吹ける嬉しさも、そして吹けなくなる不安も無くなったから。

 

久しぶりに今夜、口笛を吹いてみた。細く弱い高音が部屋に虚しく響く。夜の口笛はなんて寂しく、そして不安なのだろう。

 

大人の僕は、あの日の母と同じく、蛇の話が迷信である事はもう知っている。

それでも、今もなお近づいてくる気がした。

 

今夜、あの蛇はどこにいるのだろう。